サポーターの姿勢に胸を打たれた21歳
愛媛は後半5分に逆転を許すと、同11分にも失点。なんとかして同点に追いつきたかったが、千葉のプレスにハマってしまい、なかなかいい形でフォワードにボールを渡せなかった。
武藤は1-3の状況を打破しようと積極的にボールを受けに行ったが、雨によってスリッピーとなったグラウンドに苦戦し、なかなかボールが収まらず。トラップミスを相手チームに狙われ、ピンチを招いてしまうシーンもあった。
武藤は「ボールを受けたときのファーストタッチが流れてしまったら、すぐに寄せられる。そういう1個、1個の質やスピード感がぜんぜん違いました」と、J2首位を走る千葉のレベルに衝撃を受けていた。
その後ホームチームはどんどんギアを上げていき、2得点を追加。試合は1-5で終了し、開幕5戦未勝利(1分4敗)となった愛媛はJ2最下位に沈んだ。
四国から駆け付けたオレンジのサポーターたちは、整列するイレブンへ「頼むぞ!」と𠮟咤激励を飛ばした。武藤は「もっとチームの結果につながるようなプレーができたら良かった」と反省を吐露。プロの舞台で味わった悔しさを胸に刻みながらも、「ただ…」と言葉を続けた。
「大学だと、選手と同じくらい熱く応援してくれる人はいないので、すごく感動しました。プロには、サポーターの人たちがいることを頭に入れて試合に臨まないといけない責任感があると感じました」と、21歳は寒空の下で声を出し続けた愛媛サポーターの姿に胸を打たれていた。
チーム状況は決して良くない。それでもここから巻き返せるはずだとイレブン全員が信じている。
「いま、こういう状況でも(全員が)上を向いてやっている。プロの意識は高いと感じています。自分は大学生ですが、意識を上げてチームに貢献できるように頑張りたいです。
特別指定選手として(愛媛に)来ていますが、この時期から試合に多く絡んでいきプロ1年目では中心選手としてやっていきたい。それを実現させるために、この1年間はすごく大事だと思うので、やっていきたいです」と今後の活躍を誓った。
21歳は憧れのフクアリで、プロとしてプレーする楽しさや難しさ、そして責任を学んだ。試合には負けたものの、「緊張感があって、楽しかった」と初出場の喜びを噛みしめた武藤は愛媛FCの明るい未来となる。
(取材・文 浅野凜太郎)