罪を背負って生きる覚悟
フィリピン入国から1カ月経過してビスマルクは覚悟を決めていた。
「最初は『もうフィリピンで仕事をするしかない』と思っていましたけど、自分が(酒気帯び運転を)やってしまったのだから(進路を)選ぶことができない」と、贖罪の時間を過ごしていた男の元に吉報が届いた。
交渉していたクラブの国から労働ビザが下りた。新天地であるクロアチア2部ヴコヴァルへ移籍するまでにかかった時間は8カ月の時間を要した。罪と向き合いながら苦しみ続けたビスマルクが報われた瞬間だった。
「神さまにずっと8カ月間祈っていました。この8カ月間は神さまが僕に与えた反省の期間でもあるし、『心から自分自身を変える時間だ』と思っていました。『僕が変わらない限り、ビザは下りないんじゃないか』と考えていましたね。このままただ待つだけでは、神様は僕に道をくれないと思っていたから、自分が変わるために頑張りましたね」と、罪を悔いながら自分と向き合い続け、必死に変わろうと努力した。
無所属期間中も体を鍛え、神に祈って贖罪を絶やすことはなかった。酒気帯び運転をした際に、幸いにも自動車による人身事故、物損事故は起こさなかったが、これまでビスマルクを支え続けてきた両親、兄、指導者、クラブ関係者、応援してきたファンを裏切ってしまった。
もう二度と過ちを繰り返さないと神に誓った。だからこそ罪を背負って生きる覚悟を決意できた。
「この過ちを二度と繰り返さないことに意味があると思っています。飲酒運転だけじゃなくて『ダメと言われたことをしない』という人としての責任感を持つことによって、人は変われるのかなと思いました。これまで信じてくれた人に対して恩を返したいですね」と柔和な笑みを見せた。
2022年10月31日の盛岡との契約解除から約11カ月後の2023年9月2日に、クロアチア2部リーグ第4節ツィバリア戦で新天地のピッチに立った。
出場時間はたったの1分間だったが、大きな一歩を歩み出した。ビスマルクはこれまで支え続けてくれた人々に恩を返すために、東欧の地で奮闘し続けている。
【インタビュー】元いわてグルージャ盛岡DFビスマルクが語る兄ジェファーソンと目指す夢の先、クラブ初の1部昇格への挑戦
インタビュー後編は兄と再会を果たしたフィリピン代表での戦い、クロアチア1部昇格を目指す挑戦などを熱く語った。