「誰でも観やすい環境に…」栃木ダービーの在り方とは

「僕のクリアミスでクリアミスで負けてしまった。栃木県のみんなの想いを背負ってやったつもりなので、ほかの試合と違って悔しい。この悔しさをバネにして、絶対にJ2へ昇格してやろうと思います」

栃木ダービーを盛り上げ続けてきた栃木C・FW田中パウロ淳一は、今季公式戦2度目のダービー敗戦に悔しさをあらわにした。

フリーキックを蹴る田中

この日は、試合が行われる前から、栃木SCのファンがスタジアムの付近に栃木Cを侮辱する張り紙を張るなどピッチ外で栃木ダービーをめぐるトラブルが発生した。

両チームが公式サイトで「決して容認できません」「決して許されるものではありません」などと誹謗中傷行為に対する声明を発表。田中もSNSでこれに反応していた。

試合後、ミックスゾーンに現れた田中だが、真っ先に向かった場所はチームバスの前で待つ子供たちのもとだった。

栃木Cの背番号77は子どもたち一人、一人のサインに笑顔で応じた後、囲み取材に戻ってきてくれた。

左サイドを得意のドリブルで打開する田中(写真中央)

誰よりも地域の子供たちを想う田中が、栃木ダービーの在り方について持論を展開した。

「栃木CはJリーグ参入組ということで、ほかのJ1のダービーと比べたらダメです。初めて(観戦に)来る人、サッカーを知らない人が来やすい環境にしてあげることが、僕たちの目標です。

誰でも観やすい栃木県の新しいイベントとして確立するためには、僕たちがもっと盛り上げる必要があったかな」

また田中は「ほんの一部のファンがちょっと過剰ですけど、それは全然ファンでも何でもないと思っています。別に栃木SCが悪いとかではない。

海外のダービーに憧れる人が多すぎて…。ここは日本ですし、J3なので日本の方が観ています。絶対に(試合を)観に行きやすい環境にするべきです。

海外とは文化の違いであったり、歴史が違うわけで、より日本が強くなることを考えたら、サッカーを知らない人たちからも応援されるようなイベント、興行にしないといけない」と今後の栃木ダービーの在り方への想いを語った。

試合終了直後、ピッチに倒れこむ田中(写真中央手前)

この試合で、栃木Cは同じ街のライバルチームに今季公式戦2度目の敗戦を喫した。

田中は試合終了のホイッスルが鳴るとピッチに倒れこみ、チームメイトのGK相澤ピーターコアミとDF奥井諒がかけよるまで、腕で顔を覆い、起き上がることができなかった。

このときについて田中は「僕たちのチームのファンは、負けた試合の後にブーイングをせずに、『次勝てば大丈夫』と言ってくれるからこそ、非常に胸が痛いところがあった」と明かした。

栃木シティは来月16日午後6時からアウェイのとうほう・みんなのスタジアムで福島ユナイテッドFCと対戦する。クラブ史上初のJ2昇格に向けて、1試合も落とせない。

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栃木Cのサイドアタッカーは「不甲斐なさと悔しさをバネに、絶対に今年中にJ2へ昇格してみんなに恩返しをしたいと思います」と、この敗戦を糧にすると誓った。

(取材・文 縄手猟)

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