ストライカーの座は譲らない

試合は両チーム通じて計22本のシュートが生まれた。拮抗した展開が続く中、藤尾は前線で身体を張りながら、チームの攻撃を活性化させた。

互いにビッグチャンスを仕留め切れないまま迎えた後半14分に、背番号9がワンチャンスをものにした。

DF昌子源の低弾道パスがボックス前中央に侵入していたDF望月ヘンリー海輝(ひろき)へズドンと入った。望月からのラストパスに反応した藤尾は、自身の進行方向と反対側に流れたボールに素早く反応し、左足ダイレクトシュートをゴール右側へ突き刺した。

決勝点を決めた藤尾(中央青)

「ボールの位置は感覚で分かっていたので、足を振り抜きました。ニアに打とうと思ったんですけど、相手が滑ってきて、キーパーもそっちを警戒すると思った。相手よりも早くアクションできたのがすべてですし、結果的にファーへ打ったのが入って良かった」と、天性の感覚で決勝点を奪った。

6月11日に行われた天皇杯2回戦の京都産業大戦(2○1)以来となるホームでのゴールを奪ったストライカーは、平日ナイターの試合に集まったサポーターの元へ駆け寄り、喜びを分かち合った。

DF中山雄太とゴールを喜ぶ藤尾(右)

「自分の中ではワントップが一番ピンときている。そのポジション争いに負けないように、得点を決めてチームを勝たせたい」と振り抜いた左足は、自身が町田のエースであるとサポーターに訴えかけるような一発だった。

イレブンはこの1得点を死守し、1-0で勝利した。

望月(左)と藤尾(右)

次戦は10日午後7時から町田GIONスタジアムで、J1首位神戸と第25節を戦う。勝利すれば優勝争いにぐっと近づく大一番を、中3日で迎える。

熱戦を終えた藤尾は「こういう時間帯でも来てくれるサポーターの前で、勝利する僕たちの姿を見せられたことはうれしいです。来てもらえるからには勝たないといけない責任も生まれる。ここまで来たからには、優勝しか見えていない。そこは全員で共有しながら、目の前の1試合に勝ちたい」とタイトルだけを見据えている。

サポーターと勝利を喜ぶ町田イレブン

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この正念場を乗り切るためならば、どんな形でもゴールを奪う。額に向こう傷を負った藤尾は、ストライカーの座を誰にも譲る気はない。

(取材・文 浅野凜太郎、写真 Mai Nishimoto)

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