伝説のCS浦和戦、「終わった…」からの劇的バースデー決勝弾
――藤春選手がガンバ時代に決めたゴールの中で、特に印象深いのがやはり2015年のJリーグチャンピオンシップ準決勝・浦和レッズ戦の決勝弾です。1-1の同点で迎えた延長前半13分、丹羽大輝選手の劇的オウンゴールかと思われたところからのカウンター、しかも右足ボレーでの素晴らしいゴールでした。正直笑ってしまうくらいすごい流れでしたけど、藤春選手のところからは当時、一連の流れはどう見えていて、最後右足でボレーを打ったという感じだったんですか?
角度的に丹羽ちゃんがバックパスをするちょうど後ろにいたので、「もう終わった」と思いました…本当に。先輩なんですけど「何してんねや~」みたいな。全然浮かす必要もなかったですし。
まあでも、あの丹羽ちゃんのパスがなかったら多分相手の動きが…本当に一瞬止まった感じに見えて。ボールがポストに当たった瞬間、入ったと思って相手にはガッツポーズをしている選手もいました。
その瞬間を見逃さなかったヒガシくん(東口順昭)がオ・ジェソクに出したパスというか、あれもすごかったなって。あれでもう本当に、浦和の選手を外せました。うまくジェソクからヤットさん(遠藤保仁)に入って、ヤットさんが多分パトリックに当てて、パトリックは米倉(恒貴)選手に出して。
自分自身も「チャンス!」と思ったら行くタイプなので。何かあの瞬間…パトがヨネに出した瞬間に、中にシュウ(倉田秋)が相手を引き連れたのかな?中に入って行ってくれたおかげで自分のスペースができて。
あの瞬間、トラップしようか悩んだことも覚えていて。でも相手も、こちらにたしか平川(忠亮)選手が寄せてきたので、もうトラップせんで打とうと思って。
右足にボールが当たった瞬間にはもう「入る」と確信しました。絶対に行ったなという感覚はあったので。
気持ちよかったな、あの時。自分の誕生日(11月28日)でもあったので、すごく記憶には残っています。
――浦和の大アウェイの中で本当に素晴らしいゴールでした。
あの埼玉で決めるゴールはもう誰もが多分気持ちいいと思います。一瞬ね、静められるんで。声援を。やっぱりあそこのスタジアムになると気持ちが高ぶるというか「やってやろう」となるかなと思います。
――遠藤選手のダイレクトで入れた縦パスも効いていましたね。
ああそうです。あれがもうね、決まったかなって。ダイレクトで、パトリックに入れて。あの時点でもう全然戻っていなかったので。さすがというか。
――サイドバックにとって遠藤選手はどんな選手でしたか?
あそこまで見える選手はいないなと、ヤットさんがいなくなってからすごく思いました。
今まで本当にヤットさんのタイミングで動いていたので、そのヤットさんがいなくなって、その動きをすると、やっぱり出てこないっていうか…見えていない。あるいは一つテンポが遅れて出てくるのでオフサイドになることが多いですかね。
もうほんまに、自分が輝けたのはやっぱりヤットさんがパスをくれるから、自分の持ち味が生きたのかなとすごく今思います。
リオ五輪出場で感じた「オーバーエイジへの疑問」
――そんなガンバ時代、2016年のリオデジャネイロ五輪にオーバーエイジとして参加されました。決まるまでの流れや、事前の意思確認みたいなのはどんな感じだったんですか?
電話で聞きましたかね。電話がかかってきて「話せる?」みたいな感じで。
当時、いま松本山雅の監督のシモさん(霜田正浩、当時のナショナルチームダイレクター)だったと思うんですが、電話がかかってきて。「ちょっと話したいことがあるからホテルにきて」と言われて話しました。色々言われて、「考えてみて」みたいな感じで言われました。
――本人がOKを出して進んでいくみたいな感じでしたか?
そうです。全然断ることもできました。
誰かに相談したかったんですけど、誰にも言わなかったかな。今まで自分のことに関して相談したことがなかったんですが、その時だけは本当にすごく悩んで。色々な選手に相談しようかなと思ったんですけどなかなか言えず、自分の意思で決めた感じでした。
――大会直前で手倉森誠監督のチームに加わって、難しさみたいなものは感じました?
大会まで日にちにもないですし、U-23の選手からしたらやっぱり、先輩3人がバッと入ってくる感じなので結構気は使われていたんじゃないかなと思います。それでもしっかりコミュニケーションを取ってやらないといけないですし、難しさはすごくあったかな。
U-23の選手からしたら、もしかしたら「同世代だけでやりたい」という思いもあったんじゃないですかね。分からないですけど。やっぱりそういうのはあるのかなというのは正直思いました。
※大会直前の強化試合では地元ブラジルとも対戦。相手の11番は現アーセナルFWガブリエウ・ジェズス。
――18人という人数も難しいと思います。
正直その何と言ったらいいのか…「オーバーエイジっているのかな?」というのはすごく思うかな。やっぱりその世代で今まで試合をしてきて、オーバーエイジが入ることで当然抜ける選手もいるじゃないですか。
だから、同世代の選手はどう思っていたのかな…というのは気になりますかね、一番。