同じ絵を描けるように導いた大﨑
この日は滝のような雨が降る中で試合が行われた。視界不良と思える中で札幌の背番号25は、ピッチを幅広く見ながら奮闘した。ただ試合中に雷鳴が会場に響き渡り、前半14分過ぎに雷雨による中断を強いられた。
試合は79分間中断された。真剣勝負のリーグ戦でゲームが止まれば、モチベーションやコンディションの意地は難しいといわれることもある。
ただヴィッセル神戸のJ1制覇に貢献するなど豊富な経験を持つ大﨑にとってささいな問題でしかなかった。ゲーム再開後も球際はきびしく入り、正確なショートパスでゲームを活性化させた。
「常にみんなが同じ絵を描けるようなプレッシャーに行くのか。ちょっと(ボールを)持たれているから、一回引くのか。そういうところはなるべく意識して、みんなが同じような絵を描けるように意識して、コミュニケーションを取りました」と、大﨑は身振り手振りを踏まえてコーチングしながらチームの目的をはっきりさせた。
岩政大樹監督は「大﨑もそうですし、宮澤(裕樹)もそうですが、彼らはチーム全体を声で引っ張ることができます、彼らがチームの中心に入って声をかけ続けることで、全体の戦いがそろうという面があります。きょうは二人のおかげで、ある意味勝点が取れたという言い方ができると思います」と大﨑、宮澤のベテラン二人の振る舞いを称賛した。
前半終了間際に失点を喫したものの、被シュート計14本を耐え抜いて後半43分にバカヨコの得点で同点に追いついた。後半は札幌がゲームを支配していただけに、2試合ぶりの白星を手繰り寄せたかった。
「前半にイレギュラーがあった中で、後半は入りから試合展開がすごく良かったんじゃないかなと思います。つなぐところ、裏に蹴るところは、はっきりしていたので、本当に良かったです。良かっただけに、もったいなかったですね」と悔しさを口にした。
ただ顔を下げるわけにはいかない。サポーターはこの試合で『今年昇格するんだろ?ここで戦えない者に「次」なんて無い』というゲキを飛ばす横断幕を掲げていた。その想いに応えるように大﨑は次節に向けて沸々と静かに闘志を燃やしていた。
大﨑は「もちろん内容にもこだわらなきゃいけないかもしれないですけど、自分たちは自動昇格の可能性がある限り、そこを目指していかなきゃいけない。いまも目指しているし、そこを狙うには内容より結果が必要な時期になってくると思います。まずは勝点3、その中でもゲームをコントロールする時間が長ければ、なおいいかなと思います」と結果にこだわりながら、試合内容も改善する構えだ。
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次節は来月15日午後2時にホーム・大和ハウスプレミストドームでFC今治を迎える。約2週間の中断期間を経て大﨑を筆頭に勝ち切る集団へと成長し、1シーズンでのJ1復帰に向けた逆襲が始まる。
(取材・文 高橋アオ)