欧州を代表する強豪クラブによって争われる、世界最高峰のサッカー大会「UEFAチャンピオンズリーグ」。

日本では、WOWOWが2025-26シーズンもCLのリーグフェーズから決勝まで独占生中継(放送・配信)している。

9月に開幕した今季の大会は、リーグフェーズのMatchday(MD)3までが終了。リーグフェーズの状況が見え始めた。

そこで、WOWOWは解説を務める元日本代表の佐藤寿人氏へインタビューを実施。開幕からここまでの振り返りや、11月に行われるMD4やMD5の注目試合の展望など話を聞いた。

佐藤寿人氏

なお、WOWOWは、CL・EL全試合はもちろん、マッチハイライトや「チャンピオンズリーグダイジェスト!」などWOWOWのサッカー番組をたっぷり楽しめる「CL・EL 2025-26シーズンパス」について、好評につき11月7日(金)まで販売期間を1週間延長することを決定している。

「誰が相手のミスを作り出すか」に注目のPSG対バイエルン

――まず、リーグフェーズMD3までの流れは、どのように感じていますか。

監督や主力が抜けたレヴァークーゼンや、序盤で強い相手と連戦になったユヴェントスが苦しんでいますが、全体的には、力のあるクラブがしっかりとポイントを積み上げている印象です。

前回から大会方式が変わり、ホームアンドアウェイで同じ相手と2度戦うのではなく、MD8まで違う相手と戦っていく形式になったので、負けた相手から取り返すことはできません。最初でいかにポイントを稼ぐかが大事です。ノックアウトフェーズへのストレートイン(上位8位)を決めるチームが、昨季より早く見えてくるのではないでしょうか。

一方、プレーオフ進出(9~24位)を狙うチームは、昨季は勝点11で並んだ4チームの得失点差で決まったように、最後に1点の重みがのしかかるので、序盤は負けるとしてもロースコアに留めたいところです。

――MD4、MD5あたりから、勝ち続けてストレートインを目指す上位チーム、引き分けやロースコアの失点に抑えることを考えながらプレーオフ進出を狙うチームに立ち位置が分かれていきそうですね。今回は、MD4とMD5の目玉カードについてお聞きします。まず、MD4の「リヴァプールvsレアル・マドリー」ですが、どのような展望になるでしょうか。

どちらも、まだチームが出来上がっていない印象はあります。リヴァプールは、まだ昨季ほどの安定感はありません。作ろうとしている組織に、個がフィットするか。ボールを前に運ぶ推進力があるエキティケ選手は、もうフィットしているように見えるので、あとはイサク選手とどう使って行くか。

また、夏の移籍市場で日本円にして200億円超とも言われる金額で加入したヴィルツ選手が、まだ得点を決めていないことで周囲からは雑音も聞こえる状況。クオリティの高さは見せているので、彼がゴールを決めて調子を上げていくと、チームも安定して勝っていけると思うので、注目しています。

レアル・マドリーは、シャビ・アロンソ監督が1年目。彼が現役時代に活躍したリヴァプールのホームへ行って、どんな受け入れ方をされるのか気になりますね。

シャビ・アロンソ監督

今はカウンターアタックで点が取れていますが、組織面はまだ発展途上。もう少し攻撃のビルドアップで相手の立ち位置を広げさせて、中間ポジションを使って前に進むサッカーをしたいのではないかと思います。アルダ・ギュレル選手を重宝しているあたりは、昨季との違いかなと思うのですが、新監督の下で強い個がつながっていけるかどうかがポイントです。

どちらも攻撃が速く、スペースを与えると仕事のできる選手が揃っているので、両チームともに、守備でスペースを埋めることが重要。その守備に対し、局面をどう変えるか。組織で変えるのがリヴァプール、個で変えるのがレアル・マドリーという試合になるのではないでしょうか。セットプレーの攻防も見ごたえがあると思います。

――次は、同じMD4の「パリ・サンジェルマンvsバイエルン・ミュンヘン」について。どちらもMD3まで大勝を続けています。

大会方式が変わり、このような豪華なカードが序盤でも見られるのは、嬉しいですね。

PSGは、負傷離脱者がいる中でも、内容を伴って結果を出しています。左サイドバックのヌーノ・メンデス選手が前めのポジションを取って攻撃に参加するなど、相手に捕まえられないポジショニングから攻撃の破壊力を見せていて、さすが、連覇を目指すチャンピオンチームという強さを感じます。

MD3では復帰した左のドゥエ選手が点を取っていますし、中盤はジョアン・ネヴェス選手もいいですけど、中央のヴィティーニャ選手は、別格。身長172センチで小柄だけど、身体の使い方が上手くて、ボールを取られないし、相手の逆を取れる。この舞台であれだけの強度が出せるのも本当にすごいです。

ヴィティーニャ

日本の育成年代の選手たちは、彼のプレーに勇気づけられるものがあると思います。私は、ザイール=エメリ選手のプレーも好きですね。

バイエルンは、左サイドにルイス・ディアス選手を獲得できたのが大きいと思います。昨季は右サイドのオリーセ選手が大きな武器になっていましたが、右だけではなくなりました。攻守のバランスが非常に良く、ケインという点の取れるエースがいますし、若手のカール選手も台頭しています。

コンパニ監督が就任し、後ろから数的優位を作り出す立ち位置や、ウイングをフリーにさせる局面の作り方の上手さは、昨季から見えています。

右はオリーセ選手の後ろにいるライマー選手が絶妙な立ち位置で関わることでウイングをフリーにします。MD3のクルブ・ブルッヘ戦では、彼が左でポジションを取って、ルイス・ディアス選手にボールを預けて、そこからミドルシュートでゴールが生まれる展開もありました。(ボールを蹴る)直接的な動きでなくても、相手の守備を壊せる選手です。

どちらも、ボールを保持したとき、相手の守備ブロックを動かすためにアンバランスな形を作っていくのですが、そうすると、相手はボールを奪えばチャンスなので、攻められていてもカウンターを狙える状況。主導権というものがあるようでないというか、シームレスな攻防になると思います。

トップレベルの戦いは、細かいミスが起こらないとなかなか得点が生まれません。誰が相手のミスを作り出すか。一つの小さなミスが、次のミスを生み出す連鎖を攻撃側が起こさせるか、守備側が止めるかの戦いになるのではないかと思います。