――少し話を変えますが、先日行われた日本対イラク戦は見ましたか?

はい。ただ、後半途中からだったと思います。

――今の代表の印象とかってありますか?ここ最近は、自陣からの繋ぎでパスミスが発生するなど、これまでにはあまりなかったシーンが目立っている印象もありますが。

どうでしょう。ただ、その「ミス」で言えば、ポーランドで一つ感じたことがあります。シュロンスク・ヴロツワフは、本当に波があるチームで、良い時と悪い時の差が激しかったんです。監督が代わったとか、選手のポテンシャルの話は置いておいて、とにかく波があるチームだったんですよ。で、その波の多さが原因なのか本当にミスも多かったんです。そこで「何でこんなに波があり、ミスも多いんやろ…?」と自分も考えました。それで一つ気が付いたのは、「監督から『闘え』とか『アグレッシブに行け』と言われれば言われるほど、その波が発生しているな…」と。

――それは興味深い話です。

不思議なんですけどね。逆にそういう話がなくなってくると、選手のミスも減り、活き活きとしてくるんです。

――「闘う」や「アグレッシブ」というキーワードは今の日本代表もイメージさせますね。

試合中なんかも一緒で、監督からそういう指示が出ている時は、先制しても「守り切らないと…」という空気感になる。でも、監督から特に指示がない時は、「もっと取れるぞ」という押せ押せムードになるんです。自然と選手の考えが変わってくるんですよね。「こうせなあかん、こうせなあかん」って迫られた結果としてミスが増えるというか。特に今季のリーグ終盤戦のように大勝していた頃は、とにかく勝てそうな雰囲気があったし、難しいことでも簡単に出来そうな感覚でしたね。

――そういった感覚は日本にいた時からありましたか?

ありましたけど、日本の場合は、真面目な選手が多く技術力も高いので、「ミスが目立っていなかった」という感じがします。ポーランドは、やはり、テクニックの面では日本に劣るのでミスが目立ちやすいというか。

――なるほど。「ミス」というのは、わかっていても発生するものだと思いますが、その時、監督の反応を気にする選手も多いようですね。

やはり、選手はどうしても気にしてしまう部分がありますね。自分も練習中に監督から「えっ!?」って顔をされたこともありました。で、練習を止めると勢いよく走ってきて、「これできるの!?」みたいな態度を取られたりも…。そういうことが増えると、選手は萎縮していきますね。

――監督の対応一つで変ってくるわけですね。

で、そういう空気がチームに生まれてしまうと、選手間でも似たようなことが発生します。あるミスをテーマに「これはどっちが原因だ?」と議論することがありますが、雰囲気が悪いと「お前のせいだろ!」とお互いにぶつけ合う。

――選手にも影響が…。よく言われることですが、外国人選手の自己主張は強いですか?

やはり、強かったですね。でも、不思議なもんで気分が乗っている時は自分から謝ってくることもあるんですよ。日本人選手よりも感情の浮き沈みがわかりやすいです。

――そのような選手たちがチームメイトとなり、森岡選手自身の対応に変化は?

自分はあまり物を言わないタイプでしたが、ポーランドに行ってから「これはダメだな」と思って…それからは言うようになりましたね。チームの雰囲気が悪い時は「大丈夫、大丈夫!」と声を掛けたりとか。

――雰囲気作りですね。

当たり前ですが、物事を悪いほうに持っていっても、良いことは一つもないじゃないですか。もちろん、ポジティブなことを言ったからって全部良くなるわけではないです。でも、言うことによって、少なからず自分の気持ちは保てます(笑)なので、「自分が言うことで周りが気持ちよくなってくれたらええな~」と期待しつつ、自分の気持ちを上げるという意味でもそういう行動を取っていましたね。

――日本と比較して、チームメイトとコミュニケーションを取る機会は多かったですか?

日本のように特定のグループで週に一回飯に行ったりとか、そういう習慣はなかったですね。でも、似たようなことはありましたよ。ただ、その中でズレを感じたりも(笑)「あの時のあのプレーをどう思う?」みたいな話をするんですが、「あれ、なんか違うな?」っていうリアクションがチームメイトから返ってくる。そういう時は、困りました(笑)バルセロナの下部組織でやっていた選手とは、そういうフィーリングは合いましたけど。