トレーニング以外も全力だった。決定力を上げるために中国代表のFWウー・レイ(スペイン2部エスパニョール)、元韓国代表MFパク・チソン、日本代表FW岡崎慎司(スペイン1部ウエスカ)、イングランド代表FWジェイミー・ヴァーディ(イングランド1部レスター)と豊富な運動量を誇るスコアラーの動きを研究した。「ゴールに向かうオフザボールの動きやスペースへ抜けるタイミングが参考になった」と手応えを得た。
さらに、松尾、そして高校の同期である高橋にもアドバイスを求めた。「松くんからは相手の嫌なところを突く技術を教えてもらって今までの考え方をリセットすることができた。壱晟からは出し手と受け手のコミュニケーションを学んだ。自分の意図をチームメイトにしっかり伝えて、動くことを意識した」。
Jリーグで活躍する先輩、高校以来の親友からアドバイスを受けて思い描くプレースタイルに近づけていった。さらにプレー研究と同時進行でプロクラブに自身の動画を送り、Jリーグクラブのスカウトが集まるコネクティング・サポート・セレクションin関西に参加するなど就職活動にも励んだ。
あくなき努力が結果に結びついた。9月から開幕した東北学生リーグで6試合11得点3アシストと、リーグ戦全勝優勝の原動力となった。無尽蔵のスタミナと鋭いスプリントで敵陣の裏を突き、左右を問わない強力無比なシュートでネットを揺らし続けた。しかしJ1数チームから興味を抱かれていたが、時期は晩秋と獲得に踏み切るにはタイミングが遅すぎた。それでも爪痕を残すことはできた。
11月に水戸ホーリーホックの練習に参加した際、U-19日本代表との練習試合で躍動した。練習試合1本目で味方のロングボールに反応した嵯峨はDF成瀬竣平(名古屋グランパス)の背後を抜き去り、GK藤田和輝(アルビレックス新潟)の股を抜く先制弾を決めた。「知っている選手に臆することなくすべて出し切ろうと挑んだ。結果ゴールに結びついたので成長を実感した」。U-19日本代表相手にチーム唯一の得点を挙げたことは大きな自信になった。