――岩政監督は現役時代にタイのBECテロ・サーサナに所属し、後にJリーグに移籍したチャナティップ(元札幌、元川崎)とチームメイトになりました。このほか、全盛期のティーラシン・デーンダー(元広島、元清水)とも対戦する機会があったと思いますが、両国のトップチーム、トップ選手たちをみてきて、タイとベトナムのサッカーで何か違いを感じますか?

「まず伝えておかないといけないのは、僕がタイにいたのは10年前ですから、比較するのは難しい部分があること。それでも感覚的なところで言うと、タイの選手たちは全体的にノリがよくて、ガンガン行こうするので、こちらで手綱を取らないといけない感じ。

ベトナム人はどちらかというと、こちらから行けと言わないと行かない感覚。技術的にはどちらも高いんですが、そこは対照的だなと。背中を押してあげないといけないのがベトナム。逆に背中を引っ張ってあげないといけないのがタイみたいな感じでしょうか。その部分でもベトナムの方が日本に似ていると言えます」

――そういった部分は、タイ人選手がJリーグで活躍できてベトナム人選手ができていないことに繋がるのかもしれませんね。

「あるかもしれませんね。外国人選手として呼ぶには、チャナティップのような選手のほうが特異性があって、違いを生み出しやすいかもしれません。ただ、歴史の差とか、誰か一人の成功例が出るか出ないかの違いもあると思います」

――日本では選手の海外挑戦が珍しくなくなり、指導者の海外挑戦も少しずつ増えてきました。この流れについてはどうお考えですか?

「そこなんですが、東南アジアのトップリーグで指導する日本人指導者は少し減ってきているそうです。少し前までは、タイやベトナムに少し入ってきていて、それが減りつつある。僕自身、鹿島を離れた12月のうちは、そういう思考だったのですが、これまで指導者は、まずは日本で居場所を探して、それがなくなってどうしようとなったら、次の選択肢で東南アジアを考えていたと思うんです。

それはある意味仕方なかったし、そういうものだったのでしょうが、今は東南アジアや中東などのアジアが元気になって、サッカー界ではアジアで新しい流れが起きています。逆にヨーロッパは少し停滞感がある。世界のサッカーを俯瞰して見たとき、日本人指導者がヨーロッパに渡れないことをいつまでも悲観するのじゃなく、本当に海外でやりたいのであれば、まずアジアに出ていくべき。僕自身、今回その垣根を外して、この年齢で出てきたというのは、新しい道を示したと思いますし、これから自然とそういう時代に突入すると思っています」