陽気で熱狂的なファンと財力ある名物オーナーの存在により国内リーグが独自の発展を遂げてきたメキシコ。

ワールドカップにはほとんどの大会に出場しているが、“ルチャリブレ”と呼ばれるプロレス的なエンターテインメント性を好む傾向があったためか、最高成績は1970,1986年自国開催での8強止まり、ここ5大会では連続してベスト16の壁に阻まれている。それでも彼らの独自性に溢れるフットボールは世界中のサッカーファンを魅了してきた。

他の中南米各国とは異なり先住民もしくは混血のメスティソが大半を占めるメキシコ人は体が小さく身体能力に恵まれた選手が少ないものの、高地で鍛えられた運動量でせっせと動きパスを何本も繋ぎながら相手を疲弊させじわじわと追い込む異色のスタイルを築き上げてきた。ウーゴ・サンチェス、ホルヘ・カンポス、クアウテモック・ブランコ、ハレド・ボルゲッティら個性的な選手はそういった土壌から生み出されたのだった。

「サッカー界のガラパゴス」とも言えるそのスタイルは体格、というより上背が近いことから文化面でのガラパゴスである日本の「お手本に」と語られることの多い国でだが、そんな彼らも技術革新により世界が小さくなる時代において“グローバル”の波に抗えず、独自のスタイルか近代化かという選択を迫られている。