オシム監督は「1人1人の成長を本当に心から願ってくれていた」

――続いてはそのイヴィチャ・オシムさんの話です。ジェフユナイテッド市原(当時)へ加入した2年目、オシムさんが監督に就任されました。最初会った時の印象を改めて教えてください。

めちゃくちゃでかいなと思ったのと、めちゃくちゃ目が鋭いなと思ったくらいですかね。「何を考えているんだろうこの人は」と。

あまり言葉を発さず、ただ見ていて最初の挨拶もなかったので、当初は不気味な人でした。なんかすごい人が来ちゃったなみたいな感じでしたね、印象としては。

――オシムさんのもとで日々過ごされ、本当に選手としても大きく成長されたと思います。オシムさんは羽生さんの中にどんな存在でした?

「威厳のある父親」みたいな感じですかね。

でも、オシムさんは「教師」や「先生」と呼ばれたいと言っていたらしいんですよ。海外だと監督のこと「トレーナー」と競走馬の調教師みたいな言い方をするらしいんですけど、そういう言い方は好きではなく、「自分はティーチャーだ」みたいなことを言っていたみたいです。

それはまさにその通りで、1人1人の成長を本当に心から願ってくれていましたし、厳しい時には「お前ならできるから言っているんだ」「お前ならここまで行くぞ」と、背中を押されているような…。

「お前なら十分やれるんだからもっと頑張れ、もっと磨け」というのを1人1人に言ってくれるような人でしたね。