多くの人に助けられてきたから見えた景色

――さまざまなルーツを持つ方や外国籍を持つ方が日本で差別に直面することをよく耳にします。外国人として日本で生きた苦悩はありましたか。

本当にありがたいことに僕は周りの人にすごく恵まれました。俺のことを知らない人からはそういう目で見られることは慣れではないんですけど、嫌なものは嫌ですね。実際そういう目で見られることは、仕方ないというかそういう目で見る人はいつまでもそういう目で見ます。

外見とかで判断するような人に僕はロクな人がいないなと思っています。この肌の色やルーツのお陰でそういう人を見る目が肥えたなと思っています。逆にそういったことに関係なく優しくしてくれる人、無条件の愛じゃないですけど、困っている人を助ける人をたくさん見てきました。

両親は日本語を話せません。それで近所の人、学校の周りの友達に助けられました。いまはフィリピンに住んでいて行けていないですけど、いまでも1年に1回ぐらい高校のお母さんの集まりがあるらしくて、僕の母さんはそれをすごく楽しんでいます。こうやってすごく優しくしてくれる人がいる日本は本当に人情味のある国です。

みんな「自分が肌の色で差別された」と苦しいことばっかり言いますけど、それよりもいい思いのほうが絶対していると思う。もちろんどの国にもいい面も、悪い面もあります。海外に出たら差別がないのかといえば、そんなことはないと思います。俺はそれを体感しているので、日本だけが特別敏感というわけじゃない。

俺は苦しんだ部分もありますけど、それよりも良くしてもらった人、良くしてもらったことのほうが多いです。本当に周りに恵まれたと思います。

――外国人として外国で生きることは難しさも良さもありますよね。

『外国人として生きる』ことは多分日本の人はあまりないのかな。パスポート取得率も20%以下と聞いたので、あまり海外に出ない人が多いのかなと思っています。僕もフィリピン代表で何回か海外に行っているんですけど、海外に暮らすのは今回タイに来て初めての経験です。

それを経験したら価値観、人生観が変わります。僕の奥さんも絶賛壁にぶち当たり中なんですけど、なんとか楽しんでやっているみたいで良かったです。