「Jリーグの発展に必要なこと」

――最近は「サッカーの試合が長すぎる」と言う声も聞かれるようですが…。石井さんは、サッカークラブのファンビジネスは今後どのように発展していくとお考えですか?

アメリカはテレビがまだまだ強い力を持っていて視聴者も多いですし、国土も広いですから、現地で試合を観戦するのは裕福な層に限られるという状況があります。

なので、放送時間内に試合を終わらせるような施策が求められるんですけど…。日本のJリーグは、「ライブエンタメ型」、もしくは「滞在型」のモデルを軸にして発展させられたら良いのかなと個人的には考えています。

サッカー観戦に出かけるのは1日掛かりになることも珍しくありませんが、例えば遊園地で「アトラクションの時間をもっと短くしてほしい」とか、音楽のライブに出かけて「長すぎる」というお客さんはほとんどいないように思うんです。

スポーツ観戦を視聴型から体験型のモデルに変化させていく必要があると思いますし、もっと言うならば「体験型で生き残るしか道はないのでは?」と思っています。

これは個人的な意見ですけど、情報化社会の発達により、我々が忙殺されるようになってしまいました。

ただ徐々にAIが進化し、さまざまなものが自動化され、少子高齢化の中で働き方改革が進んでいく……。やがて、私たちの余暇はだんだん増えていくんじゃないかと思っているんです。

ですから、さまざまなレジャー施設やホテルが併設されたスタジアムで、一日のんびり過ごす流れに変化していくような気がしますし、もしそのスタイルが定着した時には、試合自体の長さはそこまで気にならないのでは?と、個人的には感じています。

――今年も2月にはJリーグが新シーズンを迎えます。サポーターの皆さんはさまざまな期待をお持ちだと思いますが、残念ながら思うように結果が残せなかったり、勝点が伸ばせずに苦しむクラブが毎年のように存在します。結果が出ないとき、クラブに携わる皆さんはどのような思いで、その戦いを見守れば良いと思いますか?

サポーターの皆さんが「どこまでクラブのことを信じてくださるのか」についてはまちまちだと思うのですが……。一度立ち止まって「自分たちのサッカーとは何だろう?」というところに立ち返ることが大切だと思います。

僕が群馬にいた頃は、高校サッカーを制した前橋育英高校をはじめとする高校生やアマチュアサッカーが盛んな地域性に目をつけ、オーソドックスな4-4-2のフォーメーションを取り入れた、アマチュア選手の良き見本となれるような粘り強いサッカーを志向していました。

結果が出ない時には気持ちが揺らぐこともあるかもしれませんが、「自分たちがどんなサッカーを目指しているのか」を忘れてはいけないと思うんです。

強くなったチームは相手に研究される機会も増えるでしょうし、他チームのサッカーが魅力的に映ることもあるかもしれませんが、クラブが根ざす地域の気質や想いとの結びつきを大切にしながら、応援していただけるチームであり続けることが大切なのかなと思います。

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石井宏司氏プロフィール(転載)

1997年にリクルート入社、デジタル関連やエンタメ関連の新規事業、人材関連のビジネスプロデュースに関わる。その後野村総合研究所にて経営コンサルティング、事業再生、次世代経営者育成コンサルに従事。その後スポーツ業界に転身し、プロクラブのM&Aやアリーナ建設プロジェクトに関わる。Bリーグ千葉ジェッツふなばし、FC東京、ザスパ群馬の経営に関わった。

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