信州の覇権を巡って白熱する緑とオレンジ

次に、信州ダービーについて特筆すべき点は、その引き分けの多さにある。

長野は2014年以来J3に所属し続けているのに対し、松本はJ2(2012-14・2016-18・2020-21)・J1(2015・2019)に所属した経験も豊富で、営業収益などのクラブ規模としては松本に軍配が上がる。

2024年度の営業収益は、長野が過去最高の8億7,400万円を計上したが、松本は14億3,000万円で倍近くとなる。

一方で、2022年から再開されたJ3での信州ダービーは計8試合のうち4試合が引き分けとなっている。

特に直近の3試合は連続で引き分けており、今回の長野の勝利で信州ダービーは4戦ぶりの決着という形になった。

前述の地域間対立が後押ししてか、両クラブとも信州ダービーをただのリーグ戦の一試合ではなく、お互いに特設サイトをつくって「長野は諦めない。」「松本に限界はない」といったスローガン(どちらも2024シーズンのダービー)を掲げるなど、特別な思いを持っていることが分かる。

チームの選手たちはもちろん、フロントやサポーターも地域の誇りの為に信州ダービーに対して全力で取り組む姿勢が、クラブの実力差を感じさせない接戦を創り出しているのかもしれない。

「ターミガンズ」(ターミガンは長野の県鳥である「ライチョウ」のこと)の愛称を持つ、緑がクラブカラーの松本。

それに対し、ケニアの雌ライオン「エルザ」を前身のチーム名として現在のエンブレムにも採用している長野は、長野の県章でも用いられるオレンジをクラブカラーとする。

互いに長野県のシンボルを分け合う両クラブは信州の覇権を巡り、年2回の特別な「信州ダービー」で白熱した試合展開を見せてくれる。Jリーグファンは要注目だ。

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次回の信州ダービーは来シーズン以降となる。どちらかのチームがJ2に昇格してしまえばカップ戦以外で戦われることのないカードだが、できれば両チームが上位カテゴリで相まみえることを期待したい。

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