厳しすぎる?ラ・リーガのサラリーキャップ制度とは?
スペインでは、各クラブ間の格差是正、経営の健全化のため、2013年より1部、2部に所属する全クラブを対象にサラリーキャップ制を導入した。
計算方法はクラブ全体の収入を元に使用限度額が毎年発表されるもので、他の国と違うのは「借金などの債務返済額」まで考慮して収支が黒字になるような計算式が用いられていることだ。また、選手だけでなく監督やコーチといったメンバー、さらに社会保険料すらもサラリーキャップの対象になっている。
サラリーキャップ計算式
「収入(Ingresos)ー非スポーツ費用(Gastos no deportivos)ー借金返済額=サラリーキャップ(Límite de Coste de Plantilla Deportiva)」
※非スポーツ費用とは、運営のための経費(事務所家賃、備品費用、人件費(サラリーキャップ対象外の)など)や選手関連以外の運用コスト
つまり、新規に選手を補強するには、収入をあげるため他の選手を放出する必要に迫られるケースが多い。
サラリーキャップの功罪
サラリーキャップにより、収入が伸びないとチーム力はあげられないし、論理上は単年度黒字でなければ経営ができない状態になっている。論理上というのは、例えば入ってくる予定のお金(スポンサー代や権利代)が何らかの事情で入ってこないということで赤字になったケースがあるからだ。
このサラリーキャップの問題点は、チームが下降線を描いたときに挽回が極めて難しいことにある。
収益が落ちるので黒字にするため選手を売却しなければならない、しかしそうなるとチームは魅力を失うし、チーム力も低下する。多くは順位がふるわず、より収益は下がる。その繰り返しである。
バルセロナは多額の債務(借金)がありサラリーキャップに苦しんでいるため、毎年のように新しい選手登録をするために誰かを放出しなければならない事態に陥っている。ハンジ・フリック監督は開幕を前に「(選手登録に)満足はしていない。1年前も同じようなことがあった。でも、良いスタートをきれた」と複雑な心境を述べている。
コロナ禍による収入の減少
サラリーキャップと相性が悪かったのがコロナ禍である。2019/20シーズンを頂点にラ・リーガの売り上げは大きく下がった。そして、2025年6月に発表された2023/24シーズンのラ・リーガの公式ファイナンスレポートでも2019/20シーズンに僅かに届かなかった。
ラ・リーガのNTI(Income)※単位100万€
2017/18シーズン 4440.8
2018/19シーズン 4877.7
2019/20シーズン 5085.5
2020/21シーズン 3945.4
2021/22シーズン 4255.3
2022/23シーズン 4892.0
2023/24シーズン 5048.1
『La Liga』による
この制度によって、先日、オランダで元・日本代表FW本田圭佑もプレーしたフィテッセが破綻したようにチーム破綻が起こることは少ない。
しかし、ラ・リーガは「一瞬冒険をして」良い選手に投資することもできなくなっている。地道に少しずつ成長を求められるからだ。