紆余曲折のアカデミー時代と仲間たち
アカデミー時代からその傑出した才能で注目を浴びていた中坂だが、素行はお世辞にもいいと言えたものではなかった。
当時の話を聞くと、中坂は「若気の至りじゃないですけど…」と苦笑いを浮かべながら当時を振り返った。
素行不良により半年間は頭を丸めて清掃活動に取り組むなど、神戸アカデミーを誇る才能は悩み多き青春時代を過ごしていた。
荒れた高校生活を過ごした影響もあり、トップチーム昇格は紆余曲折があった。昇格が見送られそうだったが、当時チーム統括本部長代行を務めていた村野晋氏が中坂のプロ入りを後押ししたという。
「問題を起こして、普通だったら僕は多分切られていたと思います。(アカデミーの)寮長だった村野さんが強化部長でして、『こいつからサッカーを奪ったら 何もなくなる』じゃないですけど、『自分が面倒を見るから(トップチームへ)上げてくれ』と僕を強く推してくれたと、あとから聞きました。すごく心から伝わるものがありました」と深く感謝していた。
心を入れ替えてプロ入りを果たした中坂は順調に結果を出し始めた矢先に、吉田孝行監督就任から出場機会が激減。2年間に渡ってほぼ出場のチャンスがなかった神戸アカデミーの才能は、プレーする喜びを失ってしまった。
引退を考えていたが、かつてともに戦った仲間たちが待ったをかけた。神戸退団時に「みんな心配してくれてたことは、すごく自分も感じていました。『サッカーを続けてほしい』と言われましたね。これが自分にとって一番大きかった。一番印象に残っています」と振り返った。
一度は引退に傾きかけていたが、仲間たちの鼓舞やFC BASARA HYOGOの熱烈なオファーもあり、次第にサッカー熱が再燃して現役続行を決めた。
自身の熱意を呼び起こした仲間たちとは神戸退団後も交流が続いている。アカデミー時代の同期であるDF山川哲史(てつし)、後輩のMF佐々木大樹とはよく連絡を取り合っているという。
ピッチ外ではバーベキューを趣味とする中坂は、仲間たちに卓越した手さばきで仕込んだバーベキューを振舞うこともあった。
バーベキューの話題になると目の色を変えて「僕は用意や準備したりするのが好きなので、バーベキューをするときは、2、3日前ぐらいからいろいろ漬けたりとかしています。バーベキューといえば牛ですけど、僕は結構焼き鳥が好きです(笑)。鳥は売られているやつじゃなくて、もも肉や胸肉を自分で切って、串で打ってから持って行っています」と熱弁。
佐々木とは近日バーベキューの約束をしており、「近々バーベキューをしようと大樹が言っているので、大樹のSNSに映るかもしれないですね」と白い歯をこぼした。