「水戸をJ1に昇格させて、水戸からロス五輪、世界へ」
現在、大混戦のJ2リーグは残り8試合。水戸は長崎に勝点で並ばれながらも依然として首位をキープしている。その中で20歳の青年はクラブとU-20日本代表として、どのような目標を掲げているのだろうか?
「今シーズンは個人として5ゴール5アシストを目標にしていたんですけど、今7点決めているので、少し(U-20W杯で)離脱しますけど、二桁ゴールを目指して残りのシーズンを戦っていきたいと考えています。
正直、シーズン前はこの時期に自分たちが首位にいるとは想像してなかったのですが、今はクラブとしての目標は優勝しか考えていません!
U-20W杯についてはアジア杯で悔しい想いをしたので、まずは自分が試合に出て結果を残すことを考えています。クラブが重要な時期を迎えるなかで自分が抜けるので、不甲斐ないプレーはできないですし、ちゃんとU-20W杯に行って来た“意味”を示す大会にしたいと思います」
毎月のように各賞を受賞し、特大のインパクトを放つ齋藤には今後、海外移籍のオファーも殺到することが予想される。現時点で海外をどの程度意識しているのだろうか?
「小さい頃は海外のサッカーはほとんど見た記憶がないんですけど、最近はアーセナルとアーセナルの主将であるMFマルティン・ウーデゴール選手(ノルウェー代表)が好きで、プレミアリーグをよく見ています。
自分はまだ語学の勉強はしてないんですけど、いずれはヨーロッパの5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア)でプレーして、チャンピオンズリーグに出場したいと考えています。
そのためにも今シーズンは水戸でJ1昇格を決めて、最近は水戸から次のロサンゼルス五輪(2028年)に出られるような選手になっていきたいと考えるようになりました。
そして、“水戸から世界へ”ということを考えたいと思います」
U-20W杯で期待したい「フィニッシャー」齋藤俊輔
世界を意識するうえでは南米のチリで開催されるU-20W杯での活躍は欠かせない。
グループAに入った日本は現地時間9月27日にグループステージ初戦のエジプト戦を迎え、9月30日には開催国チリとの第2節、10月3日には最終節のニュージーランド戦が予定されている。
決勝は10月19日に行われるため、齋藤はクラブがJ1昇格をかけて戦う大事な終盤戦を最少でも3試合、最大4試合を欠場する可能性がある。
プロ入り前の齋藤は世代別日本代表と縁がなく、今回が初めての世界大会となる。U-20日本代表のメンバーについても同世代ながら一目置く選手がいるようだ。
「今年に入ってからフル代表でデビューしたMF大関友翔選手(川崎フロンターレ)とMF佐藤龍之介選手(ファジアーノ岡山)は一緒に練習していても“止める・蹴る”の基本技術からレベルが高く、全ての質が違うなと感じます。J2では見られない質の高さです」
海外組が思ったように招集できなかったこともあり、現時点では船越優蔵監督率いるチームが本大会でどのような戦い方を選択するのかは分からないが、大関と佐藤は齋藤と共に2列目のポジションを争うライバルとなる可能性がある。
ただ、大関は司令塔型のプレーメイカーで、佐藤はチャンスメイクに秀でるアタッカー。ドリブラーから自らゴールを奪えるスケールの大きなアタッカーへと大きく変貌を遂げて来た齋藤との共存は可能だ。
代表では大関と佐藤が作り上げたチャンスを仕留めるフィニッシャーとしての活躍に期待したい。
齋藤には1度見たら忘れられない魅力がある。そんな本人にとってのプロ入り後に挙げたベストゴールは、「やっぱり、去年の横浜FC戦で決めたプロ初ゴールですね!自分でもビックリしましたから」だった。
昨季第24節の横浜FC戦、前線右サイドで後方からのロングボールを収めたFW安藤瑞季の巧みな落としを、センターサークル敵陣側の高さでスピードアップした状態で受けた齋藤はそのまま強引にドリブルで中央突破を図り、相手DFとGKの合計3人をごぼう抜き。最後は倒れ込みながら決めた驚愕のプロ初ゴールだった。
敵も味方も年上の先輩ばかりの中で、出場5試合目の高卒ルーキーがこのプレーを選択するだけでも勇気が必要な中、やってのける齋藤は自身のスキルに自信があったのだろう。
そんなボールを持てば何でもできるアタッカーが、守備やオフ・ザ・ボールの動きに進化を見せ始めている。攻守で活躍する意識が強いのはユースに昇格できず、プロ入りがJ2からだったからかもしれない。
ただ、彼はまだプロ入り後にリーグでフル出場したことがない。交代枠が5人となって久しく、攻撃陣のフル出場は珍しくなった現代サッカーだからこそ、現在の齋藤にはゴール以上にフル出場のほうが嬉しく感じられるかもしれない。
J2水戸ホーリーホックで覚醒し「世界規格」の選手になった日本人5名
初めてフル出場した試合で決勝点を挙げた際のヒーローインタビューでは、「ゴールよりも初めてのフル出場のほうが嬉しいです」と、素朴に語る齋藤の姿も見てみたいものだ。
【プロフィール】
齋藤 俊輔(さいとう しゅんすけ)
2005年4月26日生まれ(20歳)
174cm/68kg 神奈川県横浜市出身
ポジション:MF・FW 背番号:8
4歳でサッカーを始め、6歳の頃から地元・横浜市内に拠点を置く「SCH.FC」でプレー。小学3年生の頃から横浜F・マリノス・プライマリーに所属し、同ジュニアユースに昇格も、ユースへの昇格はならず。日本代表のレジェンドMF中村俊輔を輩出した神奈川県の名門・桐光学園高等学校に進学。高校3年時にインターハイで準優勝するなど実績を残し、J2・水戸ホーリーホックからのプロ契約を勝ち取った。プロ1年目となった2024年は序盤からチームが低迷する中、現指揮官・森直樹監督就任後にプロデビュー。第24節の横浜FC戦でプロ初ゴールを記録するなど、16試合(先発2)に出場。高卒1年目ながら上々のステップを踏んで迎えた今季は第29節終了時で21試合に出場(先発15)し、チーム2位の7ゴールを挙げる大活躍。今年2月にはU-20日本代表として『AFC U20アジアカップ中国2025』の2試合に先発出場。同大会で出場権を勝ち取った『FIFA U-20ワールドカップ チリ2025』での活躍が期待されている。
【Qolyインタビュー】U-20日本代表MF齋藤俊輔が止まらない!絶好調のまま上がるW杯の舞台 「水戸をJ1に昇格させ、世界へ」