攻撃は「とにかく前へ! 前へ! 前へ!」

攻撃においては、「前線へのロングボール」「ロングスロー&セットプレー」がキーワードとなる。

まずは、崩しの根幹である「前線へのロングボール」だ。秋田の選手は自陣でボールを持った際、サイドのスペースまたは2トップにロングボールを送り込むことを第一に考える。

このアクションは文字通り徹底されており、ターゲットとなる2トップを除く9名は一瞬の迷いもなく、躊躇なく前へボールを動かす。

前線に送り込まれたボールは2トップのひとり、またはサイドハーフが相手陣内のサイド深くでキープ。そこにオーバーラップしたサイドバックも絡んでクロス攻撃を仕掛けていく。

なぜ、「前線へのロングボール」にこだわるのか。1つ目の理由は、吉田監督の哲学にある。

2019年12月の監督就任記者会見では、「サッカーの目的はゴール」「ゴールへ向かっていく原理原則が正しい」としたうえで、「ゴールから逆算したものを複雑なものではなく、シンプルにやっていきたい。1点集中ではないですけれども、まず前に行こうという。ボールを後ろに下げたりだとか、パスの本数などではなくゴールに向かっていく回数、そういう想いを込めて選手たちとやっていくことが大事だと思います」と志向するスタイルを明かしている。

サッカーは得点を奪えないと勝利できない。となれば、「どのようにゴールを奪うか」という点が何よりも重要となる。

丁寧なビルドアップから前進して崩す形、スピーディーかつ華麗なカウンターでネットを揺らす形、そして前線へのロングボールで一気に相手ゴールへ迫る形――。

どの形にも魅力/メリットがあり、どれが正解とは一概に言えない。崩し方にはその監督がもっとも重要視する価値観が表れるが、吉田監督の場合は「前線へのロングボール」ということになる。この考え方は、以下の通り自分たちの長所を発揮する意味合いも含まれる。

2つ目の理由は、相手陣内のサイド深くを攻撃の起点にすることで、「ロングスロー&セットプレー」のチャンスを増加させることにある。

秋田が得意とする得点パターンは、ロングスローとセットプレーだ。ロングスローは髙田椋汰、才藤龍治、藤山智史が担当。セットプレーのキッカーは水谷拓磨、髙田、畑潤基が担い、正確なスローおよびキックから迫力ある攻めを展開する。