心労がたたって…

西シェフは奥さんと一緒に当時作業員の宿泊所として東京電力が借り受けていたアカデミー女子寮の一室で寝泊まりしていたという。衣食住を共にしていた西さんは休みもなく献身的に調理場に立ち続けた。

「夜は楽しく。皆さん『生きるか、死ぬか』で現場に行っていたと思う。僕は戦っていたわけじゃないですからね。ご飯を作っていただけですから(笑)」とほほ笑んでいた。

決して自分を大きく見せず、誰にでも笑顔で接する西シェフは謙虚な人柄であり、仕事ぶりも誠実だ。真っすぐに料理とアスリートに向き合う姿勢は多くのサッカー関係者から尊敬を集めている。そんなストイックな西さんに、多くの苦難が待ち受けていた。

1週間に2、3度ほど楢葉町からいわき市へと食材の買い出しへと向かった。自家用車のトヨタ・プリウスに詰め込めるだけの食材を詰め込んで往復80キロの道のりを移動した。休みもなく、約6年間も料理の提供、食材の買い出しを続けた。

辛かった過去を振り返る西シェフ(高橋アオ撮影)

この激務に奥さんの身体が悲鳴を上げてしまった。「(6年の間に)激務でうちのかみさんが心臓を悪くしてしまった。心房細動…、ペースメーカーを入れてね。先生には「ストレスですね」と言われたから、参りましたよ。朝昼晩とずっとやっていたからね。(奥さんには)申し訳なかった」と反省を口にした。

心臓を悪くしてしまった奥さんだったが、現在は元気に過ごされているという。西シェフと奥さんが身を削る想いで奮闘し続けたからこそ、作業員の活力になった。